はてなとの協業における任天堂・岩田社長の狙い
今回の「うごくメモ帳」と「うごメモはてな」での協業に関して、いろいろな議論がありますが、
僕が思うに、岩田社長の狙いは
自社の開発者たちにWeb文化を体験する環境をつくること
だったのではないかとと思います。
以下駄文
ゲーム人口の拡大を実現するために行ったこと
岩田さんが任天堂の社長に就任して最初に行ったことは任天堂の進む方向、達成すべきミッションを決めたことだといわれています。
それが、有名な
「ゲーム人口の拡大」
であり、そのミッションを達成すべく
- 昔はゲームをやっていたが、今はゲームから離れてしまっている人にもう一度ゲームを楽しんでもらう。
- ゲームはなんだか難しそうと思って、ゲーム機を触ってもらえない人に女性や年配の方にゲームを楽しんでもらう。
- いま既に任天堂のゲームを楽しんでもらっている人にも継続的に楽しんでもらう。
という岩田さんのスピーチによく出てくるより具体的な方向性が決まり、
- 昔、ゲームを楽しんでいた頃を思い出してもらうために「ファミコンミニシリーズ」を限定販売
- 従来の複雑なコントローラーをやめて、タッチペンや、コントローラー自体を動かすような入力方式にする
- 女性や年配の方が興味を持てる・遊べるソフトの開発(Nintendogs, 脳トレシリーズ、WiiSports、WiiFit)
- 人気シリーズは継続して開発(ゼルダの伝説、マリオ本編、マリオカート)
と、任天堂の社員たちが、その方向性にのっとった製品を作り上げていきました。
ものすごく簡単に言うと以上がここ数年の任天堂の活動ということになります。
任天堂にとっては激変とも言える変化だったと思うのですが、
任天堂で大量離脱者が出たという話は聞いたことがないので(セカンドパーティー離脱というのはある)、
元からいた社員たちを変えてしまったのが岩田社長の偉大なところだと思います。
なぜなら変化を望まない人が多いし、いくら「変われ」と言われても
自ら納得しないと変わることができないからです。
スティーブ・ジョブズもAppleに復帰した時は、かなりの離脱者を出したものです。
ゲームとインターネットの新しい関係
「ゲーム人口の拡大」が継続して進むなか、
新しいミッションが任天堂に誕生しているようです。
具体的には分かりませんがキーワードは「インターネット」だと思います。
想像するに
- ゲームとインターネットとの新しい関係をつくる
- ゲームとインターネットを組み合わせて人々に笑顔を作る
- ゲームとインターネットを組み合わせて人々を結びつける
みたいなもの。僕の考えたものは冗長なのでもっとシンプルな言葉かもしれません。
ゲームとインターネットといえば、XBOX360やPS3、PCゲームを想像するかもしれませんが、
彼らの使い方は限定的過ぎるし、一部のコアユーザーと呼ばれる人たちしか喜ばないものという判断はしているでしょう。
- インターネットとゲームが結びつくことによって任天堂にしか提供できない新しい体験ができるのではないだろうか?
- そのことによってインターネットの可能性がもっと開けるのではないだろうか?
ということを相当考えているように思います。
社長として岩田さんの役割
ここでリーダーとしての岩田社長の役割を考えてみましょう。思うに
- 任天堂の進む方向を決める
- 社員たちが自ら課題を見つけ、自分を変え、成長できるような環境をつくる
- 社員たちが変わったこと、そして実施したことを認め、評価する
の3つだと思います。
最初の進む方向は先ほど話したとおり「インターネット~~」だと思います。
岩田社長は「ゲーム人口を増やす」の時も社外の人たちに対しても
繰り返し、繰り返し発言していましたが、
社員に対してはもっともっと何度も何度も繰り返しアナウンスしていたそうです。
きっと「インターネット」に関しても想像を超えるほど繰り返しアナウンスしているでしょう。
次に社員たちが自ら変わる環境を作ることですが、
これは「うごくメモ帳」関連のインタビューを聞くと、任天堂の代名詞ともいえる本編のスーパーマリオの
重要なプログラマーである清水さんが、
「自分のやりたいことを試す時間があった」
のような発言をしています。
おそらく、すべての開発者にではないでしょうが自由に考える時間を意図的に与えていたのではないかと思います。
そして、清水さんは研究課題として今までやってきたこととは全然違う
「ネットワークをやりたい」というところに行き着きます。
参考 Touch-DS.jp - 社長が訊く『ニンテンドーDSi』2
一方、プロデューサーの小泉さんは、本編のスーパーマリオシリーズを担当している
宮本茂さんの後継者の一人なのですが、
次は「インターネット」と明確に目標をもっていたようです。
これも、社内の雰囲気やミッションが
「次はインターネット」
となっていたからなのではないかと想像します。
そして、社内のネットワークチームのスケジュールが詰まっていると分かると、
岩田社長は自ら「はてな」と協業することを思いつき実行します。
いろいろな狙いはあると思いますが、僕が思うに
社員たちに「Web界の文化」を学ぶ環境を整えたのではないかと思っています。
任天堂だってインターネットを利用したサービスを作ってきたしインターネットの技術を使ってました。
しかしWebの世界のインターネットと、ゲームの世界のインターネットは
明確な垣根があり全く交わっていないことはネットフリークである岩田社長が一番分かっていたのでしょう。
ゲームとインターネットの新しい関係を任天堂の社員が作ることを考えたとき、
Web文化のはてなの開発者たちと任天堂の開発者がお互いに影響を受けあう環境を整えてあげることに
価値を感じたのではないでしょうか?
はてなと任天堂の開発者の対談を見ると、まさに異文化交流。
お互いに深い影響を与え合ったようです。
最後に「社員たちが変わったことを認め評価する」です。
岩田社長がハル研の社長をしていたころ、
かなりの労力をかけて年に一度、全員に面談をしてたそうです。
任天堂は従業員数が少ないと言っても1000人以上の社員がいるので全員とは面談できないそうですが、
もし可能なら絶対に全員と面談したいと思っているはずです。
全員と面談することができなくなった岩田社長が、それに変わる方法として考え出したのが
「社長が訊く」シリーズです。
僕が思うに、あのシリーズの意図の半分以上は社員の教育のためだと思います。
全員とは話せない分、一部の社員と話したことを公表することで、
話してない人にも何かを感じ取ってほしいと思っているのでしょう。
他の人の仕事の体験談は、かなり教育効果が高いのは他の業種でもおなじだと思います。
ゲーム開発者以外の社員には新卒向けのコーナーを設けてしまうところからも社員と話し、それを公開することの意義を感じていることが伺えます。
明らかに内容が薄い時があるのも、それが教育目的だと思えば納得できるのではないでしょうか。
外部に公開しているものだけでもあれだけあるので、任天堂の社内には似たようなもの、もっと濃いものがたくさんあるような気がします。
今回の「はてな」との異文化交流を実際にしたのは数名でも、
あのように対談を公開することで、任天堂社内のさまざまな開発者が追体験したことになります。
その追体験を踏まえて、いろいろな提案をしているのかもしれません。
社員たちが自ら自分を変えるために。。
適切な大きさの問題さえ生まれれば
少し前ですが、ほぼ日刊イトイ新聞に「 適切な大きさの問題さえ生まれれば。 」という、岩田社長と糸井重里さん、はてな取締役でもある梅田望夫さんの鼎談がありました。
一言で言うと「これからの時代のリーダー論、生き方論」だったと思うのですが、
岩田社長は、あの鼎談の中で話題になった
「適切な大きさの問題」
を社員たちに生み出すために、さまざまな手法を考え実施しているのだなと思います。
オープンソースの世界のRubyは、まつもとさん自身がやりたいことをやること(動くこと)で、さまざまな人間に「適切な大きさの問題」が生まれるが、
一企業のトップである岩田社長が社員たちに「適切な大きさの問題」を生むためには
自ら動くのではなく社員たちにさまざまな環境を整える必要があるのでしょう。



