水木サンの戦争 完全版水木しげる伝(中)戦中編

August 15, 2010 at 08:00 AM | View Comments

ゲゲゲの女房の第21週のサブタイトルは「戦争と楽園」らしい。

20週最終日の予告動画を見ると海に飛び込んだり、崖にぶら下がったりする水木サン役の向井理の姿がある。

予算の問題もあるし本筋から外れるため全部はやらないだろうが,水木サンの戦争体験について僕が想像していたよりも深くやるようだ。

僕は歴史ものの本を読むのが好きなのだけど昭和史は老後の楽しみと思って残していた。迂闊に読むとイデオロギー云々になるので面倒ということもある。

水木サンの戦記モノに傑作が多いことは噂で知っていたが、そういったいきさつもあって今まで読まないようにしていたのだが「ゲゲゲの女房」で水木サンの漫画をいろいろ読むようになったこともあって、こちらも解禁することにした。

水木さんの戦記モノで最も有名なのは、「総員玉砕せよ!」なのだが、未読である。

「総員玉砕せよ!」は実体験を元にしていて、水木サンの分身が主人公で90%は事実だが最後だけ変えているそうだ。いずれ読みたいと思っているが、読むのはまだ後でいいと思っている。

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僕が読んだのは「完全版水木しげる伝(中)戦中編」だ。ずっと品切重版無しの状態だったのだが、7月にようやく重版された。

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これは最前線に送られてから終戦で帰国し、貸本漫画家になるまでを描いている。元は「ゲゲゲの女房」でよく引用されている「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」を文庫化するときにタイトルを変えたものらしい。元の「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」を読んだことがないので、どこがどう変わっているのかは分からない。

途中、途中であからさまに絵の雰囲気や印刷が変わるので不思議に思っていたが、どうやらそれまで描いてきた短編や、もう一つの代表作「昭和史」などの場面を繋ぎ合わせているところが多いようだ。

大きな戦闘がなかったラバウルにいたものの、なぜか戦闘を行った部隊ばかりにいて、10人の決死隊に選ばれるもののたった一人の生き残りになり、退却先の部隊は玉砕することになる、水木さんは左腕を失うも数少ない生き残りになる。

決死隊で全滅を免れた場面は

「ランボーより凄い」

と、思った。もっとも逃げるばかりで勇ましく戦うシーンはないのだが、崖から海へ飛び込んでり、服を着たまま一日中泳いだり、ジャングルの中をひたすら彷徨う、、。壮絶を極める。

戦友たちの死は砲弾や銃撃、撃沈によってのみ起こるわけではなく、マラリアやアメーバ赤痢などの病気で死に、ワニに喰われて死ぬ。そして玉砕命令。

玉砕とは勝ち目の無くなった部隊がマシンガンや戦車、砲などを持つ敵に日本刀や銃剣で突撃して全滅することだが、水木サンは無意味な玉砕より遊撃(ゲリラ戦)に転ずるとした中隊長の判断で生き延びる。とは言っても玉砕の生き残りということで大変な目にあうのだが、そちらは本書を読んで欲しい。

左手を失い、何度も再発するマラリアにも耐え本土に帰還するわけだが、帰還後の話も興味深い。

戦中、戦後直後に通じて水木サンは自分のことを正直に描いているように思える。

特に戦死した戦友の母が水木サンの元を訪ねるシーンがあるのだが、息子の最後を話し、そして、涙する母親を前に、なんと笑ってしまったそうである。別におかしいわけではないし、不謹慎なのは分かっていたようだが複雑に絡んだ感情が水木サンをそうさせてしまったそうだ。どんな心境だったのか、実際にはどんな感じだったのかは分からないが、そんなことまで正直に描くことに驚いた。

この本は、そんな水木サンの正直さ、そしてマイペースさがいたるところに見え隠れする。

すべての水木サンの漫画を読んだ訳ではないので最良かどうかは分からないが、水木サンの戦争を知るには良い本だと思う。

categories: comic, mizuki
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